O君との出会いは昨年の11月です。
ピースオブヘアーの営業中にあった1本の電話。
彼の声は少し緊張気味で「カットに来て欲しい…」と訪問カットの依頼でした。
法律上、訪問カットは健康な方には行えないので、初めての依頼の方には身体の悪いとこなど確認させて頂きます。
彼は「ひきこもりなんです…」と答えてくれました。
後から聞いたのですが、彼は5年ぶりに受話器を握ったらしく、ウチの店に電話するのにプレッシャーで吐いてしまったそうです。
ひきこもりの人が外に向かって何か行動を起こすと言う事は、大変なプレッシャーの中での行動なんですね…。
彼は僕のブログを読んでくれていたのもあって、比較的しゃべり易かったようで、カット中にいろいろお話をしてくれました。
ひきこもりになった経緯から、日頃の生活、絶望的な日々…。
僕自身もひきこもりの人を担当するのが初めてではなかったのですが、ひきこもりについてこれだけ詳しく話を聞くのは初めてでした。
5年間自分で髪の毛を切っていた彼が、吐く思いをしてまで電話をくれた理由…。
彼は確実に一歩踏み出そうとしていました。
「無だった、死んでいた…」と以前の自分を語る彼は、自分のようなひきこもりの人のサポートをしようと考えています。
自分がひきこもりだったからこそ理解できる事…。
「ひきこもりの人は、外に出れない、公共の交通機関に乗れない…だから、僕が一緒に外に出てあげたい。」
O君のひきこもりが改善された訳ではないので、すぐに出来ることではないのですが、見ず知らずの僕に訪問依頼の電話を自らかけてきた勇気は、とてつもなく大きなものだと思うし、少しずつ目標に近づいて来てると思います。
僕は、今後も彼が電話をし易いように自分の携帯番号を教えて、その日は帰りました。
そして今週、O君から2回目の依頼を受けました。
4ヶ月ぶりに会う彼は、なかなか元気そうでした。
週一回の病院にも通えるようになったそうです。
公共交通機関にはまだ乗れないみたいですが、意識は前に向いていると思います。
「僕の髪に合うワックスを持ってきて下さい!」
外に踏み出そうとしている彼の意気込みを感じる言葉、そんな彼のお手伝いが出来るこの仕事に誇りを感じます。
推計100万人を超えると言われているひきこもりの人数…。
「訪問カットを必要としている人は多いと思います。」
彼は、ひきこもりの人のサポートをする中で、訪問カットを必要としている人に僕達を紹介していきたいと言ってくれました。
「近い将来、O君と僕とで一緒に仕事が出来るといいよな!」
僕の投げかけに対して彼は
「もちろん、もう僕のビジョンの中には赤松さんがいますから!」
勇気や希望をもらったのは、僕の方なのかもしれませんね。
※今回のひきこもりの話は、O君に許可をもらって書きました。
訪問カットに行っている1時間弱での僕なりの捉え方ですので、間違っている内容や誤解を招く表現がありましたら申し訳ございません。